――脳とホルモンがつくる感情の正体

恋愛やセックスは、生きるために不可欠なものではありません。
それでも私たちは、恋に悩み、欲望に揺れ、関係に心を奪われます。
その理由は、感情だけでなく 脳と身体の生理的な仕組み にあります。

本記事では、フランスの性科学医の知見をもとに、
恋・性欲・女性の身体について、科学的な視点から整理します。


恋に落ちた瞬間、脳で起きていること

「恋に落ちる」という表現が示す通り、恋は予測不能に始まります。
この瞬間、脳内ではドーパミンやフェネチルアミンといった物質が分泌され、
強い高揚感や幸福感が生まれます。

同時に、判断力を司る働きが一時的に弱まり、
相手の欠点が見えにくくなる傾向があります。
いわゆる「恋は盲目」と呼ばれる状態です。

一方で、安心感や信頼感を生むオキシトシンは、
関係を持続させる重要な役割を担います。


性欲は「身体」ではなく「脳」で生まれる

性欲は、下腹部から自然に湧き上がるものではありません。
感情、記憶、想像、文化、育った環境などが影響し、
脳の中で形成されます。

そのため性欲は一定ではなく、
人生の局面や人間関係によって大きく変化します。
強い時期があっても、まったく感じない時期があっても自然なことです。


女性の性欲が「複雑」と言われる理由

男性は視覚的刺激などから瞬間的に性欲が喚起されやすい傾向があります。
一方、女性の性欲は感情的な安心感や、
「求められている」「大切にされている」という感覚と深く結びついています。

また女性には、

  • 自発的に性欲が湧くタイプ
  • 触れ合いの中で徐々に高まるタイプ

が存在し、後者の割合は決して少なくありません。
これは異常ではなく、多くの女性に見られる自然な反応です。


なぜ情熱的な恋は長続きしないのか

恋愛初期の強い高揚感は、脳が刺激に慣れることで徐々に落ち着きます。
この変化は自然なもので、数年以内に情熱が弱まることは珍しくありません。

しかしその後、信頼や安心感を土台とした「愛着」が育つことで、
より安定した関係へ移行することもあります。

恋が無意識に起きる現象だとすれば、
愛は意識的に築いていく関係だと言えるでしょう。


セックスと健康の関係

愛情を伴うセックスには、
ストレス軽減、免疫力の向上、心身のリラックスなど、
さまざまな良い影響があるとされています。

一方で、セックスをしないこと自体が
健康に悪影響を及ぼすわけではありません。

性欲や性生活のあり方に「正解」はなく、
自分に合ったペースが尊重されるべきものです。


出産・年齢と性欲の変化

出産後はホルモンバランスの変化や疲労により、
性欲が低下することがあります。
また年齢を重ねることで、性欲の現れ方も変化します。

これは衰えではなく、身体の自然な適応です。
年齢を重ねてもセクシュアリティは消えるものではなく、
形を変えながら続いていきます。


まとめ:性欲は「揺れ動くもの」

性欲は義務でも、常に一定である必要もありません。
環境や感情、人間関係によって変化する、
きわめて人間的なものです。

感じない時期があっても、自分を否定する必要はありません。
自分の心と身体の声を尊重することが、
健やかな人生と関係性につながります。


参考文献・出典

本記事は、フランスの性科学医によるインタビュー内容を参考に、
独自に要約・再構成したものです。
参考:『フィガロジャポン』2022年3月号